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畑 健二郎

Vol.282 /2010/04/07

【第267話/呪うと祝うは似ている】

上の画像は来週のカラーの一部。
来週は巻頭カラー!お楽しみに!!


それはさておき
先日、昼の遅い時間に洋食屋さんで一人、
飯を食ってたわけですよ。

広い店内は僕と背広姿のサラリーマンとその連れの女性だけ。
二人とも仲良さそうに会話していますが、
まぁ言ってしまえばどこにでもありそうな風景ですわな。

男性の方はいかにもメガネで真面目そう。
女性の方は小柄で童顔で……なんというか
どこか広末涼子に似た可愛らしい子でした。

まぁ別にその二人の会話を聞く気もなかったのですが、
ご飯を食べながらヘッドホンでiPodを聴くわけにもいかないし、
ガランと静まり返った店内に、その二人の会話がラジオのように
響き渡っていたので、微妙に……
なんとなく耳に入れていたわけですよ。

あ、なんとなく皆さんの中で、ハヤテのキャラでも声優さんでも
何でもいいので、その二人のキャラクター像を頭の中で作って
読むと良いですよ。

サラリーマン役……○○
女性役…………………△△

んで、向こうの二人がすっかり食事を終えて、なんとなく談笑
していたところ、男性サラリーマンの方が、急に一拍置いて、
妙な事を言い出したのですよ。

「えっと、僕ほら高学歴じゃん?」

一瞬、何を唐突に言い出したのかと思ったのですが、
女性の方もそう思ったらしく

「は?ちょっと急に何いってんの?」

といぶかしげ。
しかし、男性は続けます。

「ほら、長年一緒だから君も知っての通り、僕って高学歴じゃない
ですか? 改めて言うのもなんですが京都大学? あの国立の
凄い難しい大学をストレートで出てるじゃないですか?」
「こらこら、知ってるけどそういうのは言わないの!(笑)」
たしなめる女性。
しかし男性は続けます。

「それでほら、その京都大学をかなり優秀な成績で卒業してさ、
入った企業は○○社。ね、日本のトップ企業」
「知ってるわよ! 知ってるけどそういう事を言わない!
それとも何?自慢?」

「で、ほら。そんな僕だから今、その企業で、こう言っちゃ
なんですが……エリートコース? 的な? そういうラインに
乗って毎月○○万円くらいの給料があるじゃないですか?」
「うわ、もう完全な自慢だ。
もう、そのコースから外れてしまえば良いよ(笑)」

「それで、ほら、僕は浪費家でもないし酒も博打もやらない
堅実な性格だから、ぶっちゃけコツコツ貯めた貯金が
大体○○万円くらいあるんだよね」

「あー、はいはい。それでその自慢話は
一体どこに行きつくのかな?」

「だから……こんな不況の世の中でも……金銭的には
そんなに苦労はかけないと思うんだ……」

「は?」

「だから、僕と結婚してくれませんか?」


ボフッ!
思わず鼻からカルボナーラを吹くとこだったよ……!!
ていうか相手の女性も笑顔のまま固まったよ!

そして真剣なまなざしの男性に、女性は戸惑いながらも尋ねます。

「……え?何の話?……ていうかその話、どこまでが冗談なの?」

そりゃそうだ。俺の心の声を代弁してくれてありがとう。
しかし、男性はまっすぐ女性を見つめたまま言います。

「今、言った話に冗談はどこにも入ってないよ。
僕と……結婚してほしいんだ!」

キターーーーー!!!
おおおおお!!!
これマジのプロポーズだぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!

女性の方は遠目で見ている僕にも分かるくらい
みるみる真っ赤になって
え? え? となんだか挙動不審。

僕はiPhoneでTwitterを開きつぶやく準備。
しかし『あ、これWEBのネタになるので伏せておこう』と
iPhoneを出したり仕舞ったりして挙動不審。

そうこうしているうちに女性の方が
さっきの笑顔とは明らかに違う照れた笑顔で
「あ、は、はい。じゃあヨロシクお願いします……」
となんだかとっても幸せそう!
二人は会計を済ませ、お互い手に手をとって
店を出て行きましたとさ。

ある春の昼下がり、なんだか随分幸せな
光景を見せつけられました。

それを見て漫画家は思う。

これをそのまま漫画に出来たら、今週は
もうネーム描かなくて済むのに……
1ページもアイディアが出てない漫画家は一人
店内で途方に暮れてましたとさ。
「もうお店閉める時間だから出て行ってください」
「ひっ……!す、すみません……!」

というわけで今週の話です。


【第267話の話】

なぜ番外編か?

なんというか、ちょっと今後の布石というか何というか……

まぁ、まだ上手く行くかは分からないから
全力で知らぬ存ぜぬを決め込むために、
今は何のための布石か秘密な感じ。

とりあえず久しぶりに力の抜けた回で
個人的には楽しく描けました。

そんなこんなで来週からは新展開!!
久しぶりの巻頭カラー!!

そして、人生最大の試練の始まり!!
お楽しみに!!

それではまた来週〜☆